MEN’S 2019.04.17

101ストーリー「ミュージシャンが語るスタンダード 」
Vol.05 Lamp

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LEE(リー)の元祖モデル『101』を現代に伝えていくファッションストーリー。
さまざまな価値観が混在する今、そんな原点的なモデルをスタンダードと所縁の強いミュージシャンに着こなしてもらうとともに、“バンドの核=スタンダード”について再考。

彼らの紡ぎ出す音楽は、どんなことがベースとなり生まれたものなのか。昔から大切にしている原点に立ち返りながら紐解いていきたい。

第5回目は、ブラジル音楽やAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)のエッセンスを感じさせつつも、カラッとした心地よいサウンドを聴かせるLampが登場。マンガや日本情緒のある作品など、さまざまな制作の糧にしながらも、最終的には”Lampの音”に落とし込む彼らの芯となる部分や、これからのことについて、たっぷりと語ってもらった。

Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Lamp | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe


僕らは、長く聴いてもらえるような音楽を作っているつもり(永井祐介)

2000年、染谷大陽(ギター)、永井祐介(ボーカル、ギター、ベース、キーボード)、榊原香保里(ボーカル、フルート)の3人によって結成されたLampは、2003年に『そよ風アパートメント201』をリリースして以降、これまでに6枚のアルバムを発表してきた。そして2018年5月には7枚目となる『彼女の時計』をリリース。同アルバムのレコ発ライブは即完売となり、同年8月から9月に行われた日本国内とアジアでのツアーも好評のうちに幕を閉じるなど、約4年ぶりに活動を本格始動させた彼らに、今、心地よい追い風が吹いている。

— 『彼女の時計』は実に4年ぶりのアルバムとなりましたが、これだけの時間を費やした理由について教えてください。

染谷大陽(以下、染谷):費やした……というよりは「かかっちゃった」という感覚のほうが近いですね。本当はもう少し短いスパンで作品を出したいと考えているんですが、2000年から活動して何枚も作っているとハードルが高くなって、その分時間もかかってしまうんです。「前よりもいいものを作りたい」という気持ちで制作していると、なかなか自分の中でOKが出なくて……。

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染谷大陽
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-500)12,000円、mandoのジャケット 54,000円、SUGARHILLのシャツ 32,000円、その他スタイリスト私物

—”前よりもいいもの”とのことですが、具体的には?

染谷:人のことを考えるのではなく、自分が聴いていいと思えるかどうか、自分が感動できるかが基準になっています。でも、そこがいちばん難しい関門で、「これじゃあダメだ」を繰り返してますね。

—途中、メンバーから意見を出すことはありますか?

榊原香保里(以下、榊原):作った人が納得するまで何も言いませんね。だから「早くしろ!」なんて絶対に言わないです(笑)。

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榊原香保里
AMERICAN RIDERS 101Z 1954’s model(LM6601-146) 22,000円、USEDのワンピース 22,000円、Y.M.WaltsのTシャツ 16,000円、その他スタイリスト私物

— 曲作りの体制について教えてください。

染谷:僕と永井がそれぞれ曲を持ち寄って、作ったほうがアレンジやディレクションも含めて最後まで担当する形でずっとやっています。永井はここ何作か、宅録中心で制作しているみたいですね。

永井祐介(以下、永井):最近のミュージシャンはほとんどそうだと思うんですけど、わりと家でできる作業が増えていて、ドラムとか以外は家で、ずっとやり直したりしていますね。音楽に求めるものは人それぞれ違うと思いますが、僕も音楽を作るときには、自分が聴いて感動できるかどうかが大きなポイントになっています。

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永井祐介
AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-446) 13,000円、KICS DOCUMENT.のシャツ 24,000円、THE NERDYSのニットTシャツ 23,000円、その他本人私物

—東京・恵比寿でのレコ発ライブやアジアツアーもありましたが、こうしたライブを通じて新譜に対する手応えはありましたか?

染谷:新譜に対しては瞬発力というか、一聴してすごくいいと感じられる音楽だとは思っていないんです。むしろ、家のそこらへんにずっとあるアルバムの1枚で、でも何年か経って聴いてみたら「あ、なんかこれ、すごくいいね」って思えるものを作ったつもり。”スルメ”じゃないですが、派手さとは無縁の音楽だと思っていたので、リリースから何ヶ月も経ちましたが、その気持ちは今も変わっていないですね。

榊原:アルバムを出したっていう印象が、いちばん薄かったかも……。

— それは、結成当初からこれまでの心境の変化も関係するのでしょうか?

染谷:それはあると思います。音楽を始めた当初は、自分たちの存在をアピールしたいというような気持ちはありましたけど、最近は、自分が今聴いている音楽と同じように、誰かが長く愛して聴いてくれるような1枚を作りたいという気持ちになっていますね。

永井:僕らは、長く聴いてもらえるような音楽を作っているつもりなんです。正直なことを言うと「もうちょっと話題になってほしい」っていうのはありますけど(笑)、でも、まぁ長く聴いてもらえればいいかな、と。

— Lampの楽曲はブラジル音楽やAORの要素を感じさせつつも、最終的には”Lampの音”に仕上がっているのが印象的です。

染谷:たしかにブラジル音楽からの影響はありますが、制作が進行していく過程で曲の構成やメロディと対峙していると、もう、その取っ掛かりになった音楽からは完全に気持ちが離れるんですよね。むしろ制作途中では、自分が好きなマンガや日本情緒のあるもの、The BeatlesやSimon & Garfunkelみたいな洋楽のエッセンスも入ってくるので、最終的にブラジル音楽とは違うものになっていくのだと思います。

— また、過去のアルバムと比べると、最新作はより都会的なニュアンスが強まっている感じがします。

染谷:長年活動しているうちに音楽を作るのが上手くなり、大人っぽい部分も出てきたことで洗練された印象になっているのだと思います。

永井:それに、以前は外で録音をしていたので、最後は焦って不本意な形でリリースせざるを得ないことも多かったのですが、最近は宅録にシフトしてきたこともあって、今回は「これでOK!」という気持ちで出せましたね。

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— ところで、新作がリリースされるまでの間、2015年にはボタニカル・ハウスというレーベルを立ち上げています。こちらをスタートした経緯について教えてください。

染谷:Lampと音楽性は違うけれど、自分が聴いて好きになった何人かのアーティストに「ちゃんとリリースしようよ」って声をかけていたんですが、それを自分がやることになったのがレーベルを始めた大きな理由です。それに、以前はスタッフとのミーティングが上手く進まない時もあって「それなら自分たちで考えて、好きなことをやったほうが気持ちもラク」っていうのもあったので。だからアーティストを選ぶ基準もすごくシンプルで、自分で聴いて「いいな」と思ったら声をかけていますね。

— 例えば、所属アーティストの「公衆道徳」はどのようにして見つけたのですか?

染谷:Lampを聴いている韓国の女性ファンが、気に入ったCDを3枚くらい送ってくれたんです。聴いてみたらそのうちの1枚の公衆道徳がすごく良かったので、そこからコンタクトを取った感じですね。

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ウォッシュがかかった101Zは、花柄のワンピースやガウンといった女性的なアイテムとの相性も良好。

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ベーシックなコーディネートに101Zのストレートシルエットがよく映える。

ソウルでのライブは「この時間がもっと続けばいいのに」みたいな感覚があった(染谷大陽))

たしかに、Lampの楽曲からはブラジル音楽からの影響が感じられるが、一方で染谷大陽が語っているとおり、ポピュラーミュージックはもちろん、マンガや日本情緒のある作品など、彼らが触れてきたさまざまな要素が織り交ぜられることで最終的なLampのサウンドは形成されている。このあたりをもう少し探っていくと、彼らにとってのスタンダードな音楽の捉え方が見えてきた。

— Lampが考えるスタンダードな音楽とは、どういったものですか?

染谷:ひとつは、自分が古くから影響を受けてきた、今でもずっと残っている音楽ですね。僕たちの音楽は、ブラジル音楽はもちろん、The BeatlesやSimon & Garfunkel、The Beach Boysといった1960年代の洋楽が基になっていますが、それらは今でも好きですし、自分たちにとってのスタンダードになっていると思います。一方で音楽を発信する側としては、ファーストアルバムの頃からずっと、自分たちがいいと思うものを作り続けていることがスタンダードにつながっているんじゃないかと……。

榊原:好きなものが続いていって、それが結果的に自分たちっぽくなるっていうことじゃない?

永井:若いときは周りが見えていないから「自分たちが世界の中心」とか「これがいいに決まってる!」みたいな感じで音楽をやっていたけれど、歳を取ってくるとそれは「全然価値のないものなんじゃないか?」って思う瞬間があるんです。つまり自分が、スタンダードだと思ってやっていたことが、誰かにとっては無価値なものだったりもするし、逆に分かってくれる人もいる。だから結局は、自分たちが好きなことをやって、結果として自分たちの音楽を好きになってくれる人がいたらいいなっていう感覚ですね。The Beatlesみたいに、いろんな人が「いい」と評価してくれればそれがスタンダードになるのかもしれない。

染谷:音楽を始めたばかりの頃は、CDを聴いてカッコいいと思ったようなものを作りたいと思っていました。でも例えば、Milton Nascimento & Lo Borgesの『Clube Da Esquina』なんて、購入してから良さが分かるまで5年以上かかったんですが、今はほぼ毎週聴いている。そういったリスナーとしての体験から、ここ数年は、自分たちもそんなふうにいいと思われるようなアルバムを出したいと思ってますね。

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アクの強いアイテムも、リジッドの101Zで纏め上げれば、大人っぽい印象に。

— この特集はデニムのスタンダードであるLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、普段デニムを穿くことは?

染谷:デニム”以外”を穿く機会がないですね。当たり前の存在になっています。

永井:僕は9割方デニムです。上下デニムのときもあるくらい。

榊原:私は全然……近所に買い物に行くときだけですね。デニムを穿いている女性を見ると憧れるんですけど、自分は勇気がなくてほとんど穿かないので、今日はいい経験ができました。

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— 服を選ぶうえでポイントはありますか?

永井:僕は中学生のときにファッション誌を読み漁ってたくらいファッションが好きですね。特に、これは僕だけではなくてメンバー全員、古着が好きなんです。経年した感じとか、時間の変化が感じられるものとか……。真新しすぎると踏み込めないというか、服との距離感が近すぎて着づらいんですよね。ただ、若い頃はダメージのデニムを穿きこなせている自信があったのですが、最近はキレイな古着のほうがいいかな……と思うようになっています(笑)。

染谷:前までは1970年代より前の古着ならOKだったけど、最近は1980年代の古着もいいなぁって思えるようになってきましたね。

榊原:音楽といっしょだね(笑)。

— 「音楽といっしょ」というのは?

榊原:音楽も1980年代の音楽はすごく苦手だったんですけど、最近はとても好きになって……。

永井:僕はちょうど1980年生まれなんです。子どもの頃に1980年代を過ごして、10代の頃に1990年代を体験していると、1980年代カルチャーのトゥーマッチな感じが苦手だったんです。でも、最近ではそれがいい感じに捉えられるようになってきましたね。

染谷:僕らの大学生の頃って、1960年代がブームだったからね。

永井:1960年代と1990年代ってわりとリンクしていて、1960年代っぽい音楽も流行っていたし。だから1980年代はちょっとありえないっていう感じだった。でも、今の若者には1980年代のほうが刺さってますよね。

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— 最後に今後の活動予定を教えてください。ホームページを見ると、ソウルでのライブをライブ盤としてリリースする考えがあるようですが?

染谷:ソウルのライブは2018年のツアーの最後のほうでしたが、バンドも成熟していたし、オーディエンスの雰囲気も良かったんです。それまで、個人的にはライブが好きじゃなかったので「早く終わらないかな……」って思っていたくらいなんですが、あの時は演っていて楽しいというか「この時間がもっと続けばいいのに」みたいな感覚があったんです。そのときの音源が残っているので、今はそのリリースを目標に動いています。それ以降はまだ決まっていませんが、なるべく早く新しい作品をリリースしたいですね。

— ライブはいかがですか?

染谷:ライブ活動は今年は全然予定していなくて、制作に集中したいですね。もちろん、いいお話をいただけたら……ちょっと考えなくもないですけどね。

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Lamp
染谷大陽、永井祐介、榊原香保里の3人により2000年に結成。
ブラジル音楽やソウル、シティポップが持つ都会的なサウンドをベースにした、センチメンタルな曲風が特色。
2003年の『そよ風アパートメント201』から2014年の『ゆめ』まで、アルバム7枚と音源集『雨に花』を発表。
2015年には自身のレーベル、Botanical Houseを設立し、2018年にアルバム『彼女の時計』をリリース。
近頃は東アジア8都市でツアーを敢行するなど、国外でも精力的に活動をしている。

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Lee『101Z』 LM5101-500 13,000円 + 税
アメリカを代表する老舗デニムブランド、Leeのアイコンであり、最もスタンダードなモデル。
史上初めてジップフライが採用されたモデルで、そのストレートなシルエットは100年近く愛され続けている。
写真のリジッドのモデルをはじめ多数のバリエーションが用意されているが、いずれも日本製でハイクオリティなデニムだ。
商品ページはこちら

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Lee 『101Z 1954’s model』 LM6601-146 22,000円 + 税
Leeの代表作とも言えるスタンダードな101Zシリーズの1954年復刻モデル。
太すぎず細すぎない絶妙なシルエット、股上深めのデザイン、ジッパーフライで安定感のある履き心地が特徴。
左綾織りの生地を使用しているため、表面が柔らかで縦落ちの過程を楽しむこともできる。
商品ページはこちら

— Lamp『 “A Distant Shore” Asia Tour 2018』

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2019年4月23日発売
品番:BHRD-011
レーベル:Botanical House
フォーマット:2枚組CD(豆本サイズ歌詞ブックレット付)
定価:2,500円 + 税
録音:2018年9月8日 ソウル公演@KT&G Sangsang Madang

■収録曲
Disc-1
01.夜会にて
02.愛の言葉
03.街は雨降り
04.スローモーション
05.渚アラモード
06.さち子
07.ブルー
08.車窓
09.八月の詩情

Disc-2
01.ため息の行方
02.最終列車は25時
03.二人のいた風景
04.恋は月の蔭に
05.過ぎる春の
06.夢をみたくて
07.夜風
08.1998
09.Fantasy
10.空想夜間飛行

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